勉強法

力学の基本的な問題で満点が取れないのは図が正しく描けていないから

力学の基本的な問題で満点が取れないのは図が正しく描けていないから

力学の問題が解けないのは、図の描き方が間違っているから


力学は、力のつり合いの式や運動方程式、エネルギー保存則の式さえちゃんと立てられれば、あとは中学生でも解けるような問題が多くあります。

なのにできていないのは式が立てられていないからであり、それはきちんと図を描いて情報を整理できていないからです。

頭の中で状況を思い浮かべたり、ラフなスケッチだけで済ませようとしていたりすると、思わぬところでミスをしてしまいます。

たとえば作用・反作用の力だからといって、

作用反作用

このように描いてしまい、赤と青の力がつり合っていると勘違いする人がいます。作用・反作用の2つの力は別々の物体にはたらくものです。そして力のつり合いは、1つの物体に対してはたらく2つの力に対して使います。

なんとなくで図を描いているうちは、演習量を増やしても時間のムダになりかねません。

1つの物体と、それにかかる全ての力を描く


物理の基本的な解き方は、問題文を図にする→図から式を立てる→式から答えを出すです。

次の例題を考えてみましょう。

水平な床の上をなめらかに動く質量2mの台車がある。この台車の上に質量mのおもりをのせた。台車を大きさFの力で右側に引っ張る。おもりが台車の上で静止していられるようなFの大きさの最大値F0はいくらか。ただし、台車の上面とおもりの間の静止摩擦係数をμ、重力加速度をgとする。

問題


これを4つのステップで解いていきます。

1.注目する物体を1つだけ決め、その物体だけの図を描く


着目したい物体が複数ある場合はその数だけ図を描きます。ここができていない人が一番多いので要注意です。最初に述べた作用反作用の例も、このステップを知っていれば解決するでしょう。

さて、今回はおもりが動くかどうかを知りたいので、まずはおもりの図を描くことにします。

最初は何の物体に着目すればいいか分かりにくいですが、問題の答えに関係がありそうなものをとりあえず描いてください。違うと思ったらまた別の図を描けばいいのです。

2.その物体にかかる力の矢印を全て描く


問題に関係なさそうなものも含めて全てです。問題が難しくなればなるほど、このステップが難しくなります。

物体に触れているものからはほぼ確実に力を受けていると考えてよいでしょう。重力、慣性力、摩擦力、電磁力も忘れないでください。

例題の場合は、おもりに触れている台車から垂直抗力を受け、その他に重力と慣性力と摩擦力を受けています。

力を描いた図
代車とおもりの加速度をa、代車の上面とおもりの間の静止摩擦力をfとしました。

慣性力がはたらいている場合、非慣性系(動いている物体と一緒に視点が動く、つまり上の図のように慣性力も1つの力とする)で考えます。その方が力のつり合いの式が立てやすいため、ミスが減るのです。

静止摩擦力をμNと書く人がいますがこれは'最大'静止摩擦力です。摩擦力はfなど他の文字で書いておきましょう。また、垂直抗力を暗算でmgと書き込むのではなく、Nとしておきます。

暗算が間違っているかもしれませんし、また物理では問題の途中から条件が変更される(今回の問題だと台車を斜面上に置く、など)ことがよくあるため、垂直抗力が常にmgとは限らないからです。

垂直抗力をNとすればそれらを気にすることなく図を描けます。


3.力を分解する


力の矢印が2つの方向だけになるようにします。定期テストで出題されるような標準レベルの問題であれば、地面と平行な方向、地面に垂直な方向の2つでいいでしょう。

例題では力が水平方向と鉛直方向だけなのでこのステップは不要です。

4.図から式を立てる

[mathjax]
力のつりあい、力のモーメントのつり合い、運動方程式、エネルギー保存則を用いて図の状況を式で表します。

例題の場合は上向きと右向きを正として、
鉛直方向の力のつり合い:$$N - mg = 0 ・・・(式1)$$
水平方向の力のつり合い:$$ma - f = 0 ・・・(式2)$$
となります。

どの式を立てればよいか分からないときは全部書き出しましょう。たいした時間ロスにはなりません。その式の中から未知数が少ないものを考えればいいです。(未知数は問題文に出てきていない文字、と考えます。)

今回の2式で未知数はN、f、aです。

式1から$$N = mg$$と分かりました。

fは静止摩擦力であり、最大静止摩擦力はμNなので$$f ≦ μN = μmg ・・・(式3)$$です。

aは台車とおもりの加速度ですから、台車とおもりの図を描けば F = Ma の式から求められそうですね。今おもりは台車の上で静止しているので、台車とおもりを一つの物体として考えることができます。
おもりと台車を1つの物体として考えた
摩擦はありません。

$$F = 3ma$$より、 $$a = \frac{F}{3m}$$ が分かりました。

これを式2に代入して、$$ f = m × \frac{F}{3m} = \frac{F}{3} $$
これと式3を合わせて、$$ \frac{F}{3} ≦ μmg $$ $$F ≦ 3μmg$$
よって$$F_0 = 3μmg$$です。

まず発展問題を解き、できなかった部分だけ基本問題を解く


難しい入試問題は力や物体の数が増えて複雑になりますが、基本的な解き方は同じです。

力学全体が苦手な人も思い切ってセミナー物理の発展問題に挑戦しましょう。

上で取り上げた例題のように、力がすべて簡単にわかるような基本問題を繰り返し解いても点数は伸びません。発展問題を解いて、全ての力を見つける練習をしてください。

発展問題で見落としてしまった力があれば、それに関する基本問題を解いて理解を深めます。その上でもう一度発展問題を解くと、問題の見え方が変わってくるはずです。

ただし、これは復習のとき限定です。初めて力学を学習する人に発展問題は難しいので基本問題から順番に勉強します。

また、問題を解いているうちに「いつもここを見落とす」と思う力があれば覚えておき、問題を解くたびにその力がはたらいていないかチェックするようにしてください。

力学は熱や電磁気といった他の分野との複合問題でもよく出題されます。早い段階で復習しておかないとあとあと厳しくなりますよ。