合格体験記
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2016年東京大学教養学部合格者の数学の過去問対策・解き方
ーー難問奇問への耐性よりも標準問題を解き切る確実性を重視ーー

難問奇問への耐性よりも標準問題を解き切る確実性を重視
年度
2016年(現役)
入学
東京大学教養学部
合格大学
早稲田大学政治経済学部
早稲田大学文化構想学部
出身高校
千葉県私立渋谷教育学園幕張高校
センター試験
英語 183点 / 数I・A 89点 / 数II・B 100点 / 国語 193点 / 生物 47点 / 化学 50点 / 日本史 91点 / 世界史 88点

東大数学の目標点とその達成のために1番重要だと感じていたことを教えてください。

目標点は50点、ノルマが40点。これは各科目における自分の得点力を鑑みて決めました。僕は他の東大受験生と比べて英語に不安があったので、その穴を数学で埋めあわせる算段でした。とはいえ、かつては40点を確保すれば文句ないとされてきた東大数学にあって、50点を目標とするのは無謀だったかもしれません。

ただし、ここ2年(2016年、2017年)の東大数学は易化が著しく、数学で他と差をつけようとするならば逆に50点でも心もとないです。だから、数学で40点〜50点を取って武器にしようという僕がこれから述べる戦略が、来年度以降も通用するとは限りませんし、おそらく通用しないでしょう。易化の傾向が急に収まるとも思えないので。

以上を踏まえた上で、目標点に関することを記します。東大の数学に関しては、天下の東大なのだから難しいのだろうというイメージが一般的でしょうし、それは部分的には的を得ています。東大数学は4つの大問から構成されており、中には試験時間内に解き切るのが至難であるような難問奇問もしばしば存在します。

しかるに、4つの大問すべてが難問というのは稀です。つまり、どの年においても、受験生が以前に問題集で解いたことのあるような標準問題が、必ず1問か2問含まれています。そして、40点〜50点という僕の数学の目標を達成するために最も重要なのは、この標準問題を確実に完答することでしょう。僕はそう考えました。

標準問題なら大方の受験生は解けるだろうし、それを解き切るだけでは他を差をつけるに至らないのではないか、というとそういうわけでもない。4つの大問から標準問題を見つけ出すのには、過去に問題集で標準問題と多く触れた経験が不可欠ですし、それを確実に完答することのできる受験生も案外多くありません。だから、標準問題を解き切ることを前提に、プラスアルファで50点に届かせるという戦略が正しいと僕は信じ、それを実行しました。

本格的に東大数学の過去問対策を始めた時期と過去問を何年分解いたか、何年分解くべきか教えてください。

他の問題集で東大数学の過去問に大問単位で触れることはままありましたが、赤本に腰を据えて取り組みだしたのは高3の7月頃からです。僕は高2の9月から『新数学スタンダード演習』という問題集に取り組んでいて、教科書から入試問題への橋渡しがひと段落ついたのが高3の7月。満を持して過去問演習に突入した感じですね。

数学に関しては過去問以外のことをやらなくてもよく、時間に余裕があったので、赤本に載っている25年分を全て解くことにしました。その中で、現在の学習指導要領から外れていると思われるもの(複素平面など)を適宜除きました。

時間に余裕があるとはいえ、25年分を有意味に解き切るのにはかなりの時間を要します。後の項でも詳しく述べる予定ですが、効率化のため、僕は明らかに難問奇問と思われるものや、10分ほど考えても解答方針が立たなかった問題に関しては、すぐ諦めて解答を読むことにしていました。

入試本番でも焦ることなく標準問題を完答することを目標としていたため、標準問題のストックを少しでも増やすことを僕は重視したのです。受験勉強は、その質の重要性ばかり取り沙汰されますが、量だってもちろん多いに越したことはありません。

東大数学対策で使用した主な参考書、合格につながったと思う参考書とその使い方と効果を教えてください。

受験を意識し始めた高2からは、先に述べた『新数学スタンダード演習』と『東大の文系数学25カ年』(赤本)をメインに演習しつつ、『東大数学で1点でも多くとる方法』を合間に読んでいました。『一対一』も購入したのですが、問題掲載数の少なさが性に合わず最後までは使いませんでした。

『新数学スタンダード演習』は、入試で見かけたら解き切らないと痛手を追うくらいの、いわゆる標準問題を数多く取り揃えており、問題と解答方針をセットで暗記するところまで徹底してやり込みました。もちろん問題集で解いた問題と全く同じものが本番で出ることはほとんどないのですが、解答方針に目を移してみると、過去に暗記した方針をそのまま援用できることが意外にも多い。

だから、暗記するくらいまで『新数学スタンダード演習』を(確か3周)やり込んだことは、得点力アップに大いにつながったと僕は思っています。

赤本は、過去25年分の大問合計100問を、年度別ではなく分野別(微積分、整数、座標など)に構成しているのが特徴的です。これをやり込むことで、自分の苦手分野を把握できるのはもちろん、各分野において過去にどのような問題が出ているかを知ることができます。

東大数学は、各年度において様々な分野からの出題がありますが、それをカテゴリー分けしてみると「微積分」「座標」「整数」「確率」「二次関数」とあと数個ほどしかなく、出題分野は意外と固定されていることがわかります。つまり、分野ごとに編成されている赤本を、分野ごとに集中的に固めることで、東大数学に関してはある程度万能に対応できるようになる、ということ。

『東大数学で1点でも多くとる方法』は、まさに書名通りのコンセプトを貫いています。満点解答が書けそうにないとき、いかにして解答方針を絞り出し部分点をもぎ取るかであったり、難問に関してここまで解答が書けていれば良いといったことを、本書を読むことで知ることが可能です。

とはいえ標準問題ははじめから完答する気でいたので、最悪の事態に備えたセーフティーネットを張る目的で僕は本書を読みました。また、難問を相手に部分点をもぎとらないと目標の50点には届かないので、そのための対策としても本書は有用でした。

個別で対策が必要だった設問、合否の鍵を握ると思った設問の対策と解き方を教えてください。

どの設問が合否の鍵を握るかというのは年度によりけりなのですが、一方でどの年度にも共通していうことのできる、設問全体を通してのポイントがあります。それは、開始25分以内に完答できる大問を1つ見つけ、それを解き切ることです。

早いうちに20点を確保することで、心の余裕が生まれ、以後の試験時間も落ち着いて問題に取り組むことができます。25分というのは、試験時間を大問数で割った目安です。

短ければ短いほど有利になるでしょう。東大文系数学は、全部が難問奇問ということはなく、落ち着けば解ける問題が一問は含まれています。

1度に複数の問題に手をつけるのではなく、解ける問題を1問見つけることに最初は集中してください。

また、どのような状況であれ、見直しの時間を作ることが肝要です。

入試は基本的に1発勝負なので、数学で満点を無謀に狙うより、6割、7割の得点を堅実に確保することが大切です。そのために、見直しを行って余計なミスを潰す作業が求められます。

例えば、試験時間は残り30分、大問1つだけが白紙、という状況のとき、その白紙の大問に新たに取り組むのは愚策です。残り時間をすべて使い、既に手をつけた大問を見直し、確実な得点を増やしましょう。

見直しに割く時間を予め決めておくのも良いです。僕は、20分を見直しに充てると高3の夏休みの段階で決め、模試でも実践していました。

試験時間内のタイムスケジュールを事前に決めることで、本番での焦り、余計なミスを減らすこともできます。

東大数学の過去問の使い方(解く、答え合わせ、解説の確認、復習、解き直し)で合格につながったと思うことを教えてください。

繰り返しになりますが、過去問演習のさいに僕が気をつけていたのは、「解けないと思ったら諦めて解答を読み、時間をおいてその解答を自力で再現できるようにすること」と「問題と解答方針とセットで頭に入れておき、他の機会で応用できるようにすること」です。

答えの数値を暗記するのではなく、解答の論理構成を暗記します。そして、次に同じ問題を目にしたさい、紙に自分で解答を書いてみる。この作業まで終えて初めて問題集を「1周」したといえて、これを時間を置きつつ何回か繰り返すことで、解答方針が自分のものになるでしょう。僕は『新数学スタンダード演習』を3周、赤本を2周しました。

東大数学の過去問対策を振り返って本番の点数に直結したこと、直結せず後悔していることを教えてください。

以上までに述べたことを、後輩にもぜひ遂行してもらいたいと思っています。一方、『一対一対応』や他の参考書に手を出してみては性に合わず途中で放棄することが何度かあり、これは時間の無駄でしかなかったと後悔しています。

それらの参考書が使えないというわけではなく、どんなに良い参考書でもあまりに複数冊に手を出しすぎると、二兎を追って一兎も得ないことになるのです。市販の問題集は、それ1冊で大学入試に必要な事項をひととおりさらうことができるようになっています。成績への不安からあれこれと参考書に手を伸ばしたくなる気持ちは理解できますが、無意味なことなんですよ。

最後に合格したからこそ言える東大数学で高得点をとるためのアドバイスをお願いします!

数学で高得点をとるためには、「類題を過去に解いたことがあること」がとりわけ肝要です。

類題については、過去問を多く解くことで解決します。東大文系数学は、とりわけ確率や微積分、座標の分野で過去に類題があることが多いので、対策への道は想像を絶するほど遠くありません。

一方、整数問題などで求められる勘は当たれば良いのですが、試験本番では焦ってうまく考えられないことも多々あります。解けるか解けないかを集中して見極め、時には捨てる覚悟も必要です。

僕は東大文系数学の過去問を25年分解きました。

ほとんどの年度において天才的な発想力なしに、普段の演習の経験を活かして解くことのできる問題(僕の受験した2016年であれば、第一問、第二問(1)(2)、第三問を選び、確実に解くことによって合格点を確保することは十分可能です。

文系数学に数学力は要らない、というのが僕の持論です。

2016年は明らかに捨てるべき問題がありませんでしたが、来年以降もそうだとは限りません。より高難度の問題群になったとき、解ける問題を見極め、それを確実に解き、見直しでミスをなくすことは、一層大きな合否の分かれ目となるでしょう。

東大志望の方は、受験科目が多く、数学ばかりやっている暇もないでしょうが、少しずつ着実に問題を解き進めて本番に備えてください。