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東大数学過去問解説 2015 理系 第2問 | 複雑な確率漸化式の問題

東大数学過去問解説 2015 理系 第2問 | 複雑な確率漸化式の問題

「完璧」にこだわると破滅する


予備校や赤本の解答解説って、「完璧主義」なところがありますよね?

受験生的には超難しい問題でも「やや難」。ちょっと難しいと思っても「標準」。解説を読んでも、思いつきにくい解き方をさらっと書いていたり。よく自信を失っていました。

でも実際の入試では満点を取らなくてもいい、というか普通は取れるものじゃありません。実際、合格者平均点は50〜60点です。

ここでは合格者平均点を目指して、取るべきところ・取りたいところ・捨てるべきところを区別しつつ、「なぜ」その解答になるのかも含めて丁寧に解説していきます!


2015年東大理系数学は第1問と第3問以外でいかに取れるかの勝負


この年度の問題は第1問・第3問が答えやすく、ほとんどの受験生が満点レベルの答案を書けたことでしょう。その他の問題で20点以上稼げたかどうかが合否の分かれ目。

この第2問は第5問に次ぐ難問です。解けなくてもいい問題の一つですね。「確率漸化式を立てればいい」ということはどの受験生も分かったことだと思いますが、その漸化式が立てられない!ただ何を目標にすればいいかわかっている分、第5問よりかは取っつきやすいかもしれません。時間が余ったら第5問より第2問を優先です。

まず5分ほど使って与えられた条件を理解して$n \rightarrow n+1$の関係を考えましょう。解き方を思いつけばそのまま続行。確率漸化式を思いつきさえすれば時間はかからないと思うので20〜25分以内で解き切る。思いつかなかったら後回しにしましょう。メモを残しておくと戻ってきたときにすんなり再開できるはずです。

2015年東大理系数学第2問 問題文


 どの目も出る確率が$\frac{1}{6}$のさいころを1つ用意し、次のように左から順に文字を書く。
 さいころを投げ、出た目が1,2,3のときは文字列 $A~A$ を書き、4のときは文字 $B$ を、5のときは文字 $C$ を、6のときは文字 $D$ を書く。さらに繰り返しさいころを投げ、同じ規則に従って、$A~A$, $B$, $C$, $D$ をすでにある文字列の右側につなげて書いていく。
 たとえば、さいころを5回投げ、その出た目が順に2, 5, 6, 3, 4であったとすると、得られる文字列は、
$$ A~A~C~D~A~A~B $$
となる。このとき、左から4番目の文字は $D$, 5番目の文字は $A$ である。

(1) $n$を2以上の整数とする。$n$回さいころを投げ、文字列を作るとき、文字列の左から$n$番目の文字が $A$ となる確率を求めよ。

(2) $n$を2以上の整数とする。$n$回さいころを投げ、文字列を作るとき、文字列の左から$n-1$番目の文字が $A$ で、かつ$n$番目の文字が $B$ となる確率を求めよ。

2015年東大理系数学第2問 解答・解説 〜うまい遷移図を書けるかが勝負〜


(1) まずは $n=1, 2, 3, \dots$ と、具体的に調べる



方針
まずは$n$が1〜3のときを考えて見ましょう。確率漸化式問題の鉄則ですね。

すると↓のようになります。
transition_02
( B, C, D をまとめて O (Otherwise) としています)

出る目によって文字数がバラバラ…

さいころを振った回数で遷移図を考えるのを一旦やめて、$n$文字目と$n+1$文字目の遷移を考えてみましょう。



  • $n$文字目が$A$以外のとき、$\frac{1}{2}$の確率*で$n+1$文字目が$A$


  • $n$文字目が$A~A$の1番目の$A$のとき、$n+1$文字目は必ず$A$


  • $n$文字目が$A~A$の2番目の$A$のとき、$\frac{1}{2}$の確率*で$n+1$文字目が$A$


これをもとに解いていきましょう!

* さいころの目が1,2,3のどれか


さいころの出た目が1, 2, 3のときの文字列 $A~A$ を $A_1~A_2$ とおく。
方針でも話した通り、一つ前の文字が $A~A$ の1文字目なのか2文字目なのかで $A$ かどうか確定したりしなかったりするので、区別して考えましょう。

$n$回さいころを投げて得られた文字列の左から$n$番目の文字が $A_1$ となる確率を$p_n$、$A_2$となる確率を$q_n$、その他( $B, C, D$ )となる確率を$r_n$ とすると、
transition_fig
上図より、
\begin{cases}
p_{n+1} = \frac{1}{2}q_n + \frac{1}{2}r_n\\
q_{n+1} = p_n\\
r_{n+1} = \frac{1}{2}q_n + \frac{1}{2}r_n
\end{cases}
が成り立つ。

$p_n + q_n + r_n = 1$であるから、
\begin{eqnarray}
p_{n+1} &=& \frac{1}{2}q_n +\frac{1}{2}(1-p_n-q_n)\
&=& \frac{1}{2}-\frac{1}{2}p_n
\end{eqnarray}
特性方程式:
$$ x = \frac{1}{2} - \frac{1}{2}x $$
より$x = \frac{1}{3}$だから…

これを変形して、
$$ p_{n+1} - \frac{1}{3} = -\frac{1}{2}\left(p_n - \frac{1}{3}\right) $$
よって、$p_n - \frac{1}{3} = \left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\left(p_1 - \frac{1}{3}\right)$ で、

$n=1$のとき、最初の文字が$A$となる確率は$\frac{1}{2}$なので、$p_1 = \frac{1}{2}$ だから
$$ p_n = \frac{1}{3}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\} $$
求める確率($P_n$とする)は、$n ≧ 2$において、

\begin{eqnarray}
P_n &=& p_n + q_n\
&=& p_n + p_{n-1}\
&=& \frac{1}{3}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\} + \frac{1}{3}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\biggr\}\
&=& \frac{1}{3}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\} + \frac{1}{3}\biggl\{1-(-2)\cdot\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\}\
&=& \frac{1}{3}\biggl\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\}
\end{eqnarray}

このような問題では$n=1$の場合も確かめることがほとんどですが、今回は「$n$は2以上の整数とする」って言われているので、これで終わりでOKですね。

∴ $\displaystyle\frac{1}{3}\biggl\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^n\biggr\}$


(2) (1)のおまけのようなもの



方針
(1)でしっかり考えられていたら、これは簡単ですね。

左から$n-1$番目が$A_2$、$n$番目が$B$であればいいわけです。


左から$n-1$番目が$A_2$で、$n$番目が$B$であるような確率を考えればいい。

したがって、求める確率($Q_n$とする)は $n ≧ 3$ のとき
$q_{n-1}$ を使うのですが、$q_{n-1} = p_{n-2}$ なので $n ≧ 3$ にしておかないと、$p_0,
p_{-1}$などの「ありえない」項が出てきてしまいます。

\begin{eqnarray}
Q_n &=& q_{n-1}\cdot \frac{1}{6}\
&=& \frac{1}{6}p_{n-2}\
&=& \frac{1}{18}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-2}\biggr\}
\end{eqnarray}
$n=2$のとき、左から1番目が$A$,2番目が$B$となることはないから$Q_2 = 0$
$n ≧ 2$ について求めなきゃいけないのに対し、上で求めたのは $n ≧ 3$ の場合なので $n=2$ のときについて確認する必要がありますね。

よって$Q_n = \displaystyle\frac{1}{18}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-2}\biggr\}$ は2以上の$n$について常に成り立つ。
∴ 求める確率は $\displaystyle\frac{1}{18}\biggl\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-2}\biggr\}$

具体的に書き出してから多角的に見る


この問題は確率漸化式を立てるのが全てでした。それが難しかったわけですが。受験者のほとんどが部分点をかすめとったというレベルでした。

何が難しかったのかと言うと、やはり「さいころの出た目が1,2,3のときに $A~A$ を書く」というところ。$B, C, D$を書くときは1文字ずつ増えていくのに対し、$A$ だけ2文字ずつ増えていくので、さいころを振った回数と文字数が一致していないことがポイントですね。

普段は(例えばさいころの問題だったら)さいころを振った回数で状態の遷移を見ていきますが、今回はそれが通用しなかったというわけです。いつものパターンが通用しなかったら、早めに切り替えて別の見方で考えるのを習慣にしましょう!

漸化式をうまく立てられなくても、$n=1, 2, 3, \dots$のときの樹形図なんかを書いておくと「問題設定理解できてるぞ」アピールができると思うので、考えた形跡はなるべく残すようにするといいです。